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一位の木(イチイのき)について解説
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文:韮澤やすおみ(ピノッキオ)

イチイの皮

皮があります。ここで公開しましょう

樹齢2000年程度と推測される巨木。その外周の一部となる皮を撮影しました。
一部ではありますが、巨木の迫力を楽しむ事が出来ます。

イチイの皮

日本の有史を見守ってきた一位様
この大変古い木曽の一位様は、2000年程度、木曽の深山で生きていたのですから、日本の有史を見守っていたと言えます。
弥生時代、古墳時代、奈良時代・・・鎌倉時代・・・江戸時代・・・明治大正昭和。
そして平成初期に、木曽の深山で長寿を全うした樹です。

作品として転生

寿命尽きるまで、どんな台風にも、天変地異にも負けなかった大変古い木曽の一位様。
鶏口舎さんの手を通して、新たな姿に転生し、皆さんに愛されていく・・・。
とても素敵な事だと思います。

ぜひ、かわいがってあげてくださいね!こんなにドラマティックな材はそうはありませんよ!
そして冒頭でも伝えた通り、一位の材は寂びるほどに飴色になり、さらに味が出てきます。
素晴らしい高級材です。

この一位には、強風や台風などの天変地異と戦い、生き抜いてきた痕跡が各所にあります。
樹齢300年や500年の若い木ではないので、材の全体がドラマティックです。

2000年程度も生きていた大木だった為、台風などで大きく振られた痕跡があるわけですが、年輪が少々剥がれたり、
繊維に少し剥がれがあったりします。

寿命尽きるまで、どんな台風にも、天変地異にも負けなかった一位。

何というのでしょうか、質の悪い外国産の材にヒビが入っているような、
ガッカリな傷やヒビではなく、その生命力へ畏敬の念を覚えるほどの“痕跡”なのです。

そんな痕跡を活かした作品も作りたいと鶏口舎さんは語っておりました。
僕も楽しみにしております。そのような木彫り作品を僕は見た事がありません。
そこに目がいく鶏口舎さんは、僕の想像を超える作家です。

一位の木について解説

この木目を見ていると、祈りたくなるようなそんな気持ちになるものです。 鶏口舎さんは、この一位で、お地蔵さんやクロス(十字架)を彫っていましたね。 分かります。そのような作品を彫るべき材。

一位の木について解説

そういう域の無垢材だからこその趣。
鶏口舎ファンの皆様も、ぜひ、そんなあたりも楽しんでみてくださいね。

資料的写真

総杢盤(そうもくばん)の一枚板

杢盤(そうもくばん)の一枚板

冒頭の総杢盤(そうもくばん)の一枚板。こちらは鶏口舎さんの自宅にて保管されております。

イチイの木年輪

薄い線と濃い線のセットで1年輪=樹齢1年分。白い部分は辺材と呼ばれる部位。最後の50年程度は、極端に成長が落ちている。外側では7センチ2ミリの成長に200年程度かかっていた。内側は1ミリで1.5~3本の年輪。半径1メートル15センチとして計算すれば、最低でも樹齢2000年超。最大で2500年位?中心付近が洞(うろ)なので計測不可。

資料1
大変古い木曽の一位様の直径は2メートル弱。 最も外側では7センチで210本程度の年輪を数える事が出来ます。 内側では1ミリに1.5〜3本程度というのが平均的な数字です。

イチイの木年輪

さいたま市博物館の「深作の黒松」直径2m弱。310本の年輪が確認されている。この松は年輪の間隔が広い。成長が速かった証拠。木材としては価値が低い。

こちらは、さいたま市立博物館に展示されている松です。
直径2メートル程度です。解説によると年輪の数は310本。樹齢は310年を少し越えたくらいです。

イチイの盆栽

薄い線と濃い線のセットで1年輪=樹齢1年分。白い部分は辺材と呼ばれる部位。最後の50年程度は、極端に成長が落ちている。外側では7センチ2ミリの成長に200年程度かかっていた。内側は1ミリで1.5~3本の年輪。半径1メートル15センチとして計算すれば、最低でも樹齢2000年超。最大で2500年位?中心付近が洞(うろ)なので計測不可。

資料1
盆栽の一位です。樹齢80年を越える品です。山採り素材をベースに数十年持ち込んだ品。
おそらくは岩盤の上で生きていて、冬には雪が積もり、埋れたところより上が枯れてしまい、
そんな事を数十年繰り返していた時に盆栽人に発見され下山してきたのでしょう。
洞(うろ)の一部に年輪を数える事が出来ます。数えた限りで80本くらいの年輪があります。
高さ1メートルくらい。僕で四人目の所有者となります。

大変古い木曽の一位様は、こんな樹形だったのでは?と想像しております。
一位は、通常1000年も生きれば凄いレベルです。
それが2000年程度も生きていたので、とても一位には見えないほど立派な樹形だったそうです。

一位の盆栽は大変成長が遅いです。しかし、生命力がとても強いです。挿し木の活着率が大変高いです。
静かに、永く生きていくタイプの樹です。立派な盆栽になるには数十年掛かりますので、数的にあまり多くありませんが、日本最高峰の盆栽展“国風展”では毎年必ず一位の銘樹が出品されております。

どちらかといえば、直射日光が終日当たる場所ではなく、朝から午前中の陽と水を好みます。

土の表面が乾いたら鉢にも葉にもたっぷりと水やりします。
丁寧に可愛がっていると葉が良い色になってきます。
森などで一位の実生を見つけたら、鉢植えで育ててみると良いでしょう。
上手に剪定していけば、いつかはこんな盆栽に育つ事でしょう。

こちらの盆栽の銘(名前)ですが・・・・
一位盆栽:銘「少々古い一位様」です。
以上です。