鶏口舎で扱っている木材はすべて「銘木」と呼ばれる最高級のもの。
動物シリーズには、樹齢300年以上の長野県産の天然木曽檜(てんねんきそひのき)を使っています。
天然木曽檜は、白くて上品な木肌を持ち、心地よい香気を放つのが特徴です。最高級の建築用材として、伊勢神宮や明治神宮、法隆寺の五重塔にも使用されています。
「お地蔵さん」や「猫法師」の素材は、樹齢2000年と推測されている一位の木です。
法隆寺の宮大工の西岡常一さんの言葉で、「木は二度生きる」というものがあります。樹齢1000年の木は、建築材として使っても、それ以降1000年の命を持つそうです。
鶏口舎の作品が、誰かの大事なものとして第二の人生を生きることを願っています。
「小さく挽いた材を丁寧に刻み、祈りや希望、少しのユーモアをこめて描くこと」それが鶏口舎のコンセプトです。鶏口舎は工芸品に心を惹かれると同時に、作り手がどんどん減少していることを残念に思っていました。
「昔から受け継がれてきたぬくもりに、新しい物語を加えて形にしたい」
「民芸品のように、日々の暮らしに寄り添い、季節のおとずれを感じたり、幸せをまねいたりするものであってほしい」
そんな想いから、鶏口舎の作品はつくられています。
工業製品と違って、一つひとつ手作りするからこそ、心をこめることができます。木目のぎゅっと詰まった木に何百回も刀を当ながら、何度も色を塗り重ねながら、受け取った方が笑顔になることを祈っています。小指の爪ほどの小さな作品でも、納得いくまで、決して手は抜きません。
そうしてできた作品は、不思議なことに、手のひらに乗せると、木の香りや、ぽっと灯りがともったようなあたたかさを感じることでしょう。手作りなので、同じようにつくっても、太めだったり、細めだったり、微妙に雰囲気が異なります。
木彫りを習得するうち、もっと小さくて、かわいいものがあってもいいのではないか」というアイデアがひらめきます。試しに木彫りのねこを販売してみたところ、「優しくて、どこかなつかしい」、「お守りとして、大切な人に贈りたい」と喜ばれ、飛ぶように売れました。
2013年5月に「鶏口舎」として販売をスタート。
屋号は、昔から好きだった「鶏口となるも牛後となるなかれ」ということわざからとりました。小さな集団でもトップを目指すことで「自分には何が足りないのだろう」と内省したり、技術に磨きをかけたりする努力を惜しまなくなります。
とくに彫りの技術には試行錯誤をこらしてきました。作品の大小を問わず、何種類もの彫刻刀を使い分けながら500回前後刃を当て、独特の陰影のある作品にしています。
小指の爪ほどの赤ちゃんペンギンも同様に彫り、細かい表情を描きこむので、極度の集中力を要します。
最高の作品をつくるため、心身が万全の状態でないと彫らないのもこだわりの一つです。